なぜバッグデザイナーになったか、という質問をされると
必ずこの話しをします。
それは、私と同じ思いをもっていらしゃる塩野七生さんの
エッセイ「男たちへ」(文藝春秋社刊)にあります。
「男たちは、女のハンドバッグを、品々を入れて持ち歩く
ためのものにすぎない、と思っているにちがいない。
ところが、これが、完全な誤解なのだ。女にとっての
ハンドバッグは、女の心の、そして肉体の一部なのである。
何が入っているかは問題ではない。持ち歩くという
行為自体が、意味をもつのである。」
洋服や靴と違って、必ず身につけなければ出かけられない
わけではないバッグですが、なくてはならないものと
なっているのは、女性が自分を主張するための大事な
道具としてバッグを捉えていることに他ならない、
そう思っています。
ものを入れるだけがバッグの役割ではない、
ということでご紹介したいのが、
ボールバッグです。
直径12cmの球体で、パーティにも普段にもお使い
いただけるよう、チェーンとエナメルのストラップを
取り替えられるようになっています。
球体部分にはイタリアンアート素材を、
蝶やハートの形にカットしたものが
貼り付けてあります。
前と後ろに貼る色を変えていますので、
どちらを前に向けて持っても
楽しんでいただけます。
開閉は、球体の中央にある金具を押すと、
真ん中から開くようになっています。
先日、このバッグを気に入っていただいた方との
会話がとてもユニークでした。
「かわいいですね~、持ってみてもよろしいですか?」
「もちろんです。」
「結構重いのですね。」
「しっかりとした金具を使用しておりますので、
小さいながら、かなり重くなってしまうのです。」
「中には何が入るかしら?」
「申し訳ございません。ほとんど何も入りません。
お持ちのお財布も携帯電話も入れることが
できないと思います。」
「でも、こんなバッグを持ちたいわ。
何が入るかやってみてもよろしいですか?」
「もちろんです。」
「お財布は無理で、携帯電話もダメで。
化粧ポーチも入らないわね。」
「申し訳ございません。」
「でも、何かは入りますよね。
今あるバッグの中にあるもので入りそうなものは、
ハンカチかしら。入ったわ、よかった。」
結局、ご購入いただきました。
重くて何もはいらない球体を持ちたがる
女性の心理。
男性には理解いただけないでしょうか。
mayumi kondoのアイコンバッグになっているのが、イタリアンアート素材の
レオパードフラワートートバッグです。
このバッグを通してたくさんの方々と出会い、いつかはこのバッグが欲しい、
というお声もたくさんいただいています。
ひとつのバッグを気に入ってくださる方が世代を越え、
国境も越えていてくださるのは本当にうれしいことです。
デザインは、
イタリアンアート素材のよさを感じていただけるよう、
レオパードフラワー柄がきれいに見えるようシンプルにしています。
ハンドルや底、内側の上部には、オーストリッチ革の
ミンクという色を使っています。なぜオーストリッチを
使っているか、底につぶの部分を使うなんてぜいたく、
と感じられるかもしれませんが、イタリアンアートを
活かす素材を数々合わせた結果、オーストリッチが
主張しすぎずお互いを引き立てられること、ミンクという色は、
茶色でもグレーでもない曖昧色で、レオパードフラワーの色に
合わせた時、このバッグがどのような服装にも似合う
ベストな色であることがわかり、使用しています。
また、底部分にもオーストリッチを使用することで、
素材に妥協しない贅沢さを感じていただけると思っています。
開閉はマグネットで、内側もシンプルに両サイドに
ポケットがあるのみです。
裏地には、丈夫で破れにくいという理由で、
薄い牛革を使用しています。
極限まで薄くすることで、重くならないことも
考えています。
「独創的でありながら、普遍的で奇をてらわない優しいデザイン」
皆さんにそうおっしゃっていただいています。